2022 年 78 巻 6 号 p. II_63-II_68
本研究では,鳴門市に造成されたビオトープが,コウノトリの餌場として機能するかを明らかにするため,周囲の飛来回数の異なるレンコン田とコウノトリの餌生物量を比較した.餌生物は,すくい採りとペットボトルトラップによって採集した.調査の結果,ビオトープで採集された餌生物の湿重量は,コウノトリの飛来回数が多いレンコン田より小さかった.レンコン田で採集された生物は,アメリカザリガニやウシガエルといった外来種が大半を占めた.これらの生物はコウノトリの主要な餌となり得るが,在来種を捕食するなど,在来生態系に負の影響を与えることが懸念される.今後のビオトープ管理においては,在来種の生息に適した環境づくりとともに,外来種の侵入・拡大防止を両立する取り組みが重要であると考えられた.