2018 年 10 巻 3 号 p. 230-237
近年,歯学領域では顎骨や歯周組織,歯の再生医療を目的とした幹細胞研究が盛んに行われている.また,補綴歯科領域における幹細胞研究は再生医療にとどまらず,疾患モデルの構築や創薬研究へと発展しつつある.安定した再生医療の確立には,用いる幹細胞の発生学的な由来を考慮し,本来たどってきた発生過程を模倣した組織再生をいかに導くかが鍵と考えられている.特に歯はユニークで複雑な発生過程をたどるため,選択した細胞によってその過程を再現する方法は異なってくる.本稿では,組織再生に重要な要素の一つである「細胞」に焦点を当て,補綴歯科領域に応用可能と期待されるさまざまな幹細胞を紹介する.