日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
視神経乳頭腫脹が遷延した川崎病—症例報告と文献レビュー
津村 悠介益田 博司仁科 幸子小林 徹小野 博賀藤 均阿部 淳石黒 精
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2017 年 40 巻 5 号 p. 377-381

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抄録

  川崎病は小児に好発する全身性急性血管炎である.主要症状の一つである眼球結膜充血以外にも様々な眼合併症を呈するが,小児科医の認知度は低い.川崎病の急性期に視神経乳頭腫脹を合併し,その所見が遷延した2歳女児例を経験したため報告する.本例は基礎疾患として家族性滲出性硝子体網膜症が存在し,生後4か月時に光凝固術が施行され,以降,当院の眼科で経過観察されていた.眼科定期受診時に,両眼球結膜充血,右視神経乳頭の腫脹を指摘され,小児科に紹介された.受診時はすでに解熱していたが,問診により,発熱を含めた川崎病主要症状4項目を呈し,心臓超音波検査で冠動脈の拡張を認めたため,川崎病と診断した.第15病日に免疫グロブリン静注療法を行い,炎症所見は速やかに改善したが,視神経乳頭の腫脹が消失するのに6か月を要した.経過中,視機能の低下は認めなかった.一般に,川崎病の眼合併症は前眼部に好発し,2か月以内に自然軽快するとされている.視神経炎および視神経乳頭腫脹を合併した川崎病についての既報告例を検討すると,7例中3例で2か月以上に渡り所見が遷延していた.ただ,本例のように,川崎病で視神経乳頭腫脹が6か月間遷延したという報告はこれまでに1例しかなく,極めて稀である.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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