日本臨床免疫学会会誌
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第42回総会ポスター賞受賞記念論文
全身性エリテマトーデス(SLE)患者B細胞におけるケモカイン受容体発現異常
好川 真以子中山田 真吾岩田 慈久保 智史湯之上 直樹汪 曉珮田中 良哉
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2015 年 38 巻 1 号 p. 65-68

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抄録

  SLEは全身性自己免疫疾患であり,その病態形成過程において自己反応性B細胞が中心的に関与し,特にメモリーB細胞への分化偏向と活性化が重要であることが明らかにされてきた.しかし,B細胞の質的な異常とその誘導機構については依然不詳な点が多い.これに比し,T細胞においてはエフェクター細胞への分化,機能的な役割が細分化され,マスター転写因子やケモカイン受容体の発現パターンの異なる機能的なサブセットの存在が明らかとなっている.B細胞の性質を探求する過程において,様々な類似性を有するT細胞のバイオロジーは有効な情報となり得る.そこで,著者らはT細胞のサブセット分類に用いられるケモカイン受容体(CXCR5,CXCR3)に着目して各分化段階におけるB細胞の特徴を検討し,B細胞の再分類を試みた.その結果,SLEではCXCR5減弱とCXCR3増強を伴う病的なB細胞を認めることを見出し,濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞との相互作用を介した自己抗体産生および病態組織に再循環するメモリーB細胞のエフェクター機能の獲得による病態形成の可能性を示した.さらに,これらのB細胞は免疫抑制療法による疾患活動性の改善後も末梢血に残存することから,既存治療では根治困難なSLEの病因に関与している可能性が考えられた.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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