分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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ESI-MSによるモリブデン青法における錯体生成反応の解析
高橋 茉莉子田中 美穂
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2012 年 61 巻 12 号 p. 1049-1054

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抄録

JISに定められたモリブデン青法は,試料溶液にモリブデン酸イオンを含む酸性溶液と酒石酸アンチモニルカリウムを加え,さらにアスコルビン酸で還元を行う.このとき,溶液中ではアンチモンが付加したモリブドリン酸が形成していると言われている.しかし,このモリブデン青法において,形成される錯体及びその形成反応に関する詳細な情報は報告されていない.これらの情報を得るため,エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いて,溶液中の化学種についての測定を行った.モリブデン青法で発色させた溶液をESI-MSで分析をしたところ,これまでに報告されていた形とは異なる,[PSb2Mo12O40]と考えられるピークが観察された.また,反応に用いる各試薬の役割を明らかにするため,反応の各段階について詳細に検討した.この結果から,アンチモンを用いるモリブデン青法では,モリブドリン酸(PMo12)が形成し還元された後にアンチモンが付加するという反応経路が推測された.このように,溶液中の反応を追うための新たな手法として,ESI-MSによる測定は有効であると考えられる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2012
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