日本作物学会紀事
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高温登熟条件下で発生する水稲品種の白未熟粒割合と基肥窒素施肥量との関係
高田 聖坂田 雅正亀島 雅史山本 由徳宮崎 彰
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2010 年 79 巻 2 号 p. 150-157

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抄録

高温登熟条件下でも玄米品質が優れる品種の選抜に有効な基肥窒素施肥量について検討するため,水稲22品種・系統(以下,品種と記す)を供試して基肥窒素施肥量の違いに伴う白未熟粒割合の変動の品種間差を明らかにしようとした.多くの品種では基肥窒素施肥量を増やし登熟期間の窒素栄養状態を高めることで基白粒は減少したが,1穂籾数が増加し炭水化物の分配量が低下することによって乳白粒は逆に増加した.また,基肥窒素施肥量の増加による乳白粒の増加程度が大きい品種(ふさおとめ,南国そだち等),基白粒の減少程度が大きい品種(ひとめぼれ,コシヒカリ等)およびそれらの変動が小さい品種(高育69号,はたじるし等)が認められ,基肥窒素施肥量の違いに伴う白未熟粒割合の変動には品種間差があることが明らかとなった.さらに,基肥窒素施肥量の増加に伴って乳白粒が大きく増加する品種は,窒素施肥量の増加によるm2当たり穂数,同籾数の増加程度が大きく,玄米千粒重および登熟歩合が低下しやすい特性を有するものと考えられた.以上のように,異なる基肥窒素施肥条件下では白未熟粒割合の品種間の傾向が異なったことから,高温登熟条件下でも玄米品質が優れる品種の選抜精度を高めるためには,基白粒割合,乳白粒割合をその発生が助長されるそれぞれ少肥および多肥条件下で評価し,それらの評価を総合して選抜することが有効と考えられた.

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© 2010 日本作物学会
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