2017 年 66 巻 2 号 p. 97-111
【背景】1970年代後半頃よりスギ花粉症が各地で増加し,厚生省は花粉症対策をとり,その一環として空中花粉の全国調査が開始された.
【目的】花粉症の効果的な治療・予防に役に立てるために各地の重要な木本類の空中花粉調査結果をまとめたので報告する.
【方法】各施設で1986年7月よりDurhamの花粉捕集器(重力法)を設置して空中花粉を採取した.当施設に郵送されたサンプルをカルベラ液で染色し光学顕微鏡下で算定し,1cm2当りの花粉数に換算した.
【結果と考察】スギ花粉が最も多く,全体の40%以上,ヒノキ科は約20%で,木本花粉抗原の大部分を占め,著しい年次変動をしながら漸増している.ブナ科花粉は漸増し全体の10%以上を占め,カバノキ科花粉は北海道地区で多く地域性があった.
重要抗原花粉のスギ・ヒノキ科は気候変動とともに漸増し,カバノキ科と交差抗原性のあるブナ科も漸増している.花粉感作関連食物アレルギー(口腔アレルギー症候群)の出現に注意する必要がある.
【結論】今後も空中花粉調査の重要性が示唆された.