アレルギー
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原著
加工食品における小麦タンパク質の不溶化とアレルゲン性の変化について
田中 賀治代蟹江 悠紀内藤 宙大鈴木 美沙楳村 春江田上 和憲酒井 一徳古田 朋子山田 千佳子和泉 秀彦横大路 智治松尾 裕彰伊藤 浩明
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2017 年 66 巻 3 号 p. 222-230

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抄録

【背景・目的】食物の加工はタンパク質の分解,変性または重合をもたらし,アレルギー患者の反応性を変化させる可能性がある.本研究は,小麦タンパク質の加工における変化とそれらに対する患者血清の反応性の変化を明らかにすることを目的とした.

【方法】薄力粉,うどん,パンから異なる抽出液にてタンパク質を抽出し,SDS- polyacrylamide gel電気泳動を行った.また,小児小麦アレルギー患者血清を用い,IgE-Immunoblottingを行った.

【結果】薄力粉からは可溶性タンパクが抽出され,SDSを加えるとグルテン画分も抽出された.うどんやパンからは,ジスルフィド結合を切断しなければ,何れの画分も抽出されず,うどんのゆで汁へのタンパク流出はごく僅かであった.抽出されたタンパク質に対する患者血清中のIgE抗体の反応性は,加工食品間で違いを認めなかった.

【結語】小麦アレルゲンはグルテン形成後,熱を加えることで強く不溶化するが,IgE抗体の反応性は変化しなかった.この結果と実際の摂取時誘発症状との関連については,さらなる検討が必要である.

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© 2017 日本アレルギー学会
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