大きさ推定における事前バイアスとアンカリング効果―情報量の少ない固有名詞を用いた例―

小沢 勲男
竹川 高志

誌名
電子情報通信学会論文誌 D      No.2    pp.405-413
発行日: 2018/02/01
早期公開日: 2017/11/06
Online ISSN: 1881-0225
DOI: 10.14923/transinfj.2017HAP0008
論文種別: 特集論文 (ヒューマンコミュニケーション〜伸縮自在のコミュニケーション〜論文特集)
専門分野: ヒューマン情報処理
キーワード: 
ベイズ更新,  数理モデル,  認知バイアス,  対数正規分布,  対数t分布,  

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あらまし: 
論理的な関係性の有無にかかわらず事前提示した数値に事後の推定・判断が引きずられるアンカリング効果と呼ばれる現象がある.本論文では大きさ推定における回答の分布に着目しアンカリング効果の定量的な評価を試みた.大きさ推定の対象は知名度の低いオパビニアという生物とし,単語のみから体長を推定する実験を実施した.アンカーなし条件と複数のアンカーあり条件でそれぞれ回答者の重複なしにアンケート調査を行った.回答は0.05〜10000 cmと広範囲に広がり,全体として裾の長い分布の形状が得られた.アンカーあり条件においてはアンカーの効果が確認された.実験結果を元に事前分布を対数t分布と仮定したベイズ更新の枠組みでアンカリング効果に関する数理モデルを構築した.数理モデルは推定対象に対して保有する知識量や,アンカーに対する確信度に依存するパラメーターを含んでおり,今後様々な分野において応用することが期待できる.