理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-324
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一般演題(ポスター)
理学療法学科学生の不安要因について
堤 文生
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抄録

【目的】理学療法学科に在籍する学生は、入学時から学業成績や進級判定、理学療法士としての適性など不安と期待を抱きながら2年次・3年次へと進級していく。更に、最終学年ともなれば臨床実習・国家試験・就職など様々な不安を抱えることとなる。このような不安に対し、個別面談や進路指導といった教育心理的介入も教員に課せられた責務である。学生のもつ「不安要因」を分析することで、学生への指導に役立てることを目的とする。
【方法】対象は理学療法学科1年生64名、2年生69名、3年生65名である。学生生活における不安について最大10項目まで自由記述させた後、各学年の共通項目を抽出し類似した30項目をアンケート項目とした。例えば、「単位が取得できるか不安である」、「生活費や学費など経済的に不安がある」、「対人関係がうまく出来ず不安である」、「臨床実習において課題を乗り切れるか不安である」、「希望する病院や施設に就職できるか不安である」、「理学療法士にむいているのか不安である」などである。回答は「1、非常に不安である」、「2、不安である」、「3、どちらともいえない」、「4、不安はない」、「5、全く不安はない」の5件法とした。調査は10月の後期開始時に、集合調査方式にて実施した。各30項目の不安度と合計得点による不安度について、学年別・性別・成績別・寮生と通生別の2群および3群に分類し、独立群の検定(2標本t検定、マンホイットニー検定、一元配置分散分析、クラスカルワーリス検定、多重比較法)および因子分析を用いて統計処理を実施した。
【説明と同意】アンケート調査に際し、本研究の趣旨を説明し同意と求めた上で実施した。
【結果】学年別での比較では、「履修科目の判定結果」、「理学療法士としての適性」、「自己の体調管理」、「講義の学習方法」、「アルバイトと学業の両立」などにおいて1年生・2年生の不安度が有意に高いのに対し、「寝坊による遅刻」、「臨床実習での課題遂行」、「臨床実習での人間関係」などにおいて3年生の不安度が有意に高い。各学年の成績順位より分類した3群間(上位、中間位、下位)での比較では、「単位の取得」、「対人関係」、「学業への課題遂行」、「留年への不安」、「国家試験の合格」などにおいて成績下位群の不安度が有意に高い。更に性別での比較では、「単位の取得」、「履修科目の判定結果」、「理学療法士としての適性」、「講義内容の理解」、「試験での実力発揮」、「対人関係」、「臨床実習での課題遂行」、「臨床実習での人間関係」、「国家試験の合格」などにおいて女性群の不安度が有意に高い。生活面(寮生と通学生)の比較では、「履修科目の判定結果」、「臨床実習での一人暮らし」において通学生の不安度が有意に高い。不安要因について、198名の30項目でのバリマックス回転後の因子分析(因子負荷量≧0.40)を行った結果、第1因子として「進級、卒業、単位取得、判定結果、学習方法」など学習因子(寄与率12.5%)、第2因子として「臨床実習、将来の進路、就職」などの臨床因子(寄与率11.0%)、第3因子として「適性、退学、生活費や学費、奨学金」など経済因子(寄与率8.8%)が潜在因子として抽出された。これら3因子の累積寄与率は32.3%であった。さらに、第1因子得点~第3因子得点を求め学年別・成績別・性別・生活面別での比較を行った結果、学習因子では1年生が最も不安度が高く、臨床因子では3年生が最も不安度が高い。成績別では学習因子および経済因子で成績下位群が最も不安度が高い。性別では女性群が学習因子および臨床因子で不安度が高い結果を示した。
【考察】一般に不安を感じることは学生の常である。しかし学年毎に学習目標に相違があり、障壁となる事柄が異なっている。それらを乗り越えることで理学療法士としての道が開けるといえる。学習面では成績に関する不安が非常に高く、単位の取得に敏感に反応する姿勢がみられた。臨床面では、実習期間中での課題遂行や人間関係、就職先や安定性などに不安を抱いていることが窺える。経済面では、アルバイトと学業との両立や生活費・学費、理学療法士としての適性などに不安を感じている。各学生の因子得点を2次元平面に散布しその不安特徴を解析する。今後、半年後(4月の進級時)に再調査を実施し、各学生の不安殿度の変化を解析し報告したい。
【理学療法研究としての意義】学生の不安に関して、成績不良学生のみが抱える問題と一概に言えない。そこで、多くの学生が抱える不安要因を解析することが学生指導に重要である。今後、継続的に調査を行い、どの様な時期に不安が軽減するか、どの様な性格の学生が不安を抱きやすいかなど調査を進めていきたい。

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© 2010 日本理学療法士協会
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