Journal of Veterinary Medical Science
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Campylobacter jejuni感染ウズラにおける壊死性肝炎の形成
三澤 尚明大西 貴弘内田 和幸中井 雅晶那須 哲夫伊藤 喜久冶高橋 英司
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1996 年 58 巻 3 号 p. 205-210

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抄録

Campylobacter jejuniに起因するニワトリの壊死性肝炎の実験モデルを確立するためにウズラを用いた感染試験を行った. ニワトリ肝炎由来株C.jejuni BL107株とヒト下痢症由来HP5113株の培養菌液を胃内, 尺側皮静脈あるいは膵十二指腸静脈内に接種し, 経時的な肉眼病変の観察と, 肝臓, 脾臓, 血液, 胆汁および盲腸内容からの接種菌の回収を行った. 尺側皮静脈および膵十二指腸静脈内接種では, 1日後から肝臓の表面および内部に巣状壊死が多数認められたが, 胃内投与では認められなかった. 抗C.jejuni抗体を用いた免疫染色により, クッパー細胞や肝細胞内, 肝細胞間に菌体が認められた. また菌体は壊死周辺部の肝細胞内に検出されたが, 壊死の中心部にはほとんど認められなかった. 多数の接種菌が肝臓から3日後まで回収されたが, 血中抗体価の上昇とともに減少し, 血液および脾臓からも検出されなくなった. 感染ウズラは顕著な臨床症状を示さず, 肝病変は接種10日以降認められなかった. 一方, 接種5分後には胆汁中から接種菌が検出され, 以後14日後まで回収された. 以上から, ウズラの静脈内にC.jejuniを接種することにより, ニワトリに類似した壊死性肝炎を再現することが可能となり, ウズラは本病の有用な実験動物になりうると思われた.

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