日本農芸化学会誌
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放射状菌に関する研究
ジヒドロストレプトマイシン並にビタミンB12の生産について
中沢 鴻一柴田 元雄山本 弘一神崎 俊彦東出 栄治浜田 義雄三宅 彰岩崎 英介
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1958 年 32 巻 4 号 p. 324-330

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抄録

(1) 肉エキスーペプトン系培地ではDSM生産にCaCO3が必須であり,又B12の生産には不適当であった.
大豆粉-コーンスティープリカーを窒素源として用いるとB12の生産は著しく良好になった.1万培地のペプトンは大豆粉でおきかえることが出来,窒素源として大豆粉,コーンスティープリカーを組合わせることによりDSM, B12いずれの生産にもよい結果を示した.
(2) コーンスティープリカーを含み炭素源が澱粉の時, DSM生産には,窒素源は大豆粉よりカゼインがよく,又いずれの場合も塩酸処理した方がしない場合よりすぐれていた. B12生産にはカゼインより大豆粉の方がよい結果を示した.又米ぬかを添加するとDSM, B12いずれの生産に対しても阻害的に働く.
(3) コーンスティープリカー-大豆粉加水分解物系の培地では,炭素源としてガラクトース,フラクトースが最もよく,マンノース,デキストリン,グリセリンがこれに次ぐ.蔗糖,マルトース,ラクトースは利用されないかあるいは殆んど利用されないと考えられる.
(4) デキストリン-大豆粉加水分解物-コーンスティープリカー系の培地ではK2HPO4あるいはMgSO4を除去した場合, CaCO3 0.3%, 0.6%, 1.0%の場合,又亜鉛,鉄,銅,マンガンを別々に添加した場合いずれもDSM生産には何等の影響もみられなかった, B12生産においてはK2HPO4を加えた方がよく, CaCO3は0.3%の場合が一番よい.亜鉛,鉄,マンガンはいずれにも特別な効果はみとめられなかった.
(5) Co(NO3)2・6 H2Oを50γ%の割合に添加しただけで, B12のほぼ最大生産量が得られ,添加しない場合の14~15倍の効果があった. DBI, DDB, PD,数種のどタミン混合物はいずれもB12生産能を高める作用はなかった.
(6) 工業的にも適用の可能性のある培地としてはデキストリン3%,コーンスティープリカー3%,大豆粉加水分解物1%, K2HPO4 O.1%, CaCO3 0.3%, Co(NO3)2・6 H2O 100γ%であった.この時のDSM最高単位は1140mcg/mlであり, B12生産量は463mγ/mlであった.
(7) 実験室的にDSM生産の最適培地は,ガラクトース3%,コーンスティープリカー3%,カゼイン加水分解物1%, MgSO4・7 H2O 0.05%, CaCO3O 0.3%, Co(NO3)2・6 H2O 100γ%であった.この時のDSM生産量は最大1839mcg/mlでありB12は343mγ/mlが最大であった.

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