日本薬理学雑誌
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特集:ミクログリアがコードする情報の読み出しへの挑戦
複数種のグリア細胞によるシナプス貪食
河野 玲奈池谷 裕二小山 隆太
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2023 年 158 巻 5 号 p. 348-352

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抄録

脳内の神経細胞は互いにシナプスを形成することで回路を構築するが,グリア細胞はシナプスの形成と除去に関与している.グリア細胞には,ミクログリア,アストロサイト,オリゴデンドロサイトがあり,それぞれ異なる遺伝子発現パターンや形態に支えられた特徴的な機能を有しているが,シナプス貪食という共通の機能を通して,神経回路のシナプスの数を調節することが明らかになった.また,脳の部位や時期によって,特定のグリア細胞が特定のシナプスを貪食することが報告されており,それぞれの貪食プロセスに関わる分子メカニズムの一端が解明されている.例えば,シナプス貪食との関連で最も多く報告されているグリア細胞であるミクログリアは,補体を含む様々な「eat me signals」を認識してシナプスを貪食し,発生期の神経回路の精密化に寄与することが知られている.さらに最近では,アストロサイトやオリゴデンドロサイト前駆細胞もシナプスの貪食に関与していることが明らかになっている.興味深いことに,異なる種類のグリア細胞が同じ種類のシナプスを貪食しているという報告もある.そして,場合によっては,異なるグリア細胞種が互いにシナプス貪食を制御していることも示唆されている.本総説では,グリア細胞によるシナプス貪食に関する最近の研究を紹介しながら,複数種のグリア細胞によるシナプス貪食の意義について議論する.

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