日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(27)
コモンマーモセットを用いた精神科領域のトランスレーショナル行動薬理研究
榎本 健史池田 和仁
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2019 年 153 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

精神科領域では既存薬よりも有効性に優れた化合物探索の多くは失敗してきた.その主な要因の1つには,精神疾患の適切な行動評価系と病態モデル動物の欠如が挙げられる.精神疾患の病態では前頭前皮質の関与が高いことから,今後のトランスレーショナル研究では本脳領域の発達した非ヒト霊長類コモンマーモセットが実験動物として有望である.臨床では統合失調症や大うつ病患者で認められる意欲低下,否定的感情バイアス,認知機能障害などを客観的かつ定量的に測定する臨床ラボラトリー課題が開発されている.マーモセットでもトランスレーショナル研究のために,臨床ラボラトリー課題に対応した行動アッセイ系の構築が進んでいる.一方,精神疾患の病態を反映したマーモセットモデルの作製には未だ多くの限界がある.本稿ではマーモセットを用いた精神科領域のトランスレーショナル行動薬理研究の現状と展望について概説する.

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© 2019 公益社団法人 日本薬理学会
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