2017 年 149 巻 2 号 p. 76-78
精神疾患の多くは古くより遺伝性が認められており,こうした背景に基づく臨床遺伝学的研究から,近年,数多くの発症脆弱関連遺伝子が見いだされてきた.一方で,精神疾患の発症が遺伝的要因だけでは説明できないことも示され,現在,精神疾患は遺伝的要因と環境要因の相互作用により発症する多因子疾患であると考えられている.疾患の病態解明や新規治療標的の探索において,環境要因の役割が注目されている.このような中,我々は神経機能,特に精神機能に着目し,齧歯類を用いて遺伝子-環境相互作用について追究してきた.本稿では,精神疾患の遺伝的要因を持つマウスの情動行動に対して「幼若期の環境要因」が及ぼす影響について概説する.