日本薬理学雑誌
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グラミシジン穿孔パッチ記録法
赤池 紀扶
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1999 年 113 巻 6 号 p. 339-347

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抄録

近年,我々はニューロン,グリアやマイクログリアなどの微小細胞,そして大型の心筋細胞にみられる化学受容体(レセプター)直結型やGTPタンパク介在セカンドメッセンジャー系で制御されるクロライド(Cl-)チャネルの働き,加えて各種細胞のCl-トランスポーターと連関する細胞内Cl-濃度の変動を生理学的条件下に観察可能にした新技術,グラミシジン穿孔パッチ記録法を開発した(1~5).本法は抗生物質の一種,グラミシジンによって生体膜に形成された化学的小孔は一価陽イオンのみを選択的に通過させるという特性を穿孔パッチ記録法として利用したもので,パッチ膜下の細胞が含む生理的Cl-濃度に何らの影響も与えることなく細胞のCl-応答を記録したり細胞内Cl-濃度を正確に測定できる.本著では特に,発達・加齢,痙攣発作や神経外傷などによる脳機能損傷時における中枢ニューロンの細胞内Cl-濃度がいかに変化するのかに焦点を絞り,抑制性のγ-アミノ酪酸(GABA)やグリシン(Gly)のCl-応答を指標にして解説した.

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