日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
中枢Benzodiazepine ω1型,ω2型,ω3型受容体に対するLormetazepamの作用
小沢 正樹仲田 行恵杉町 恵子赤井 哲夫山口 基徳
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 98 巻 5 号 p. 399-408

詳細
抄録

benzodiazepine(BZ)系睡眠導入薬lormetazepamのBZ受容体サブタイプ(ω1型,ω2型,ω3型)への作用を明らかにする目的で,マウスhexobarbital睡眠試験と懸垂法筋弛緩試験,並びにラットBZ受容体結合試験を行い,他のBZ系薬物の結果と比較した.lormetazepamは他のBZ系薬物同様hexobarbital誘発正向反射消失時間を用量依存的に延長し,その最小作用量(1mg/kg,p.o.)はtriazolamやbrotizolamと同じで,diazepam(3.2mg,/kg,p.o.)やzopiclone(100mg/kg,p.o.)よりも低かった.lormetazepamは高用量では筋弛緩作用を示したが,その最小作用量(10mg/kg,p.o.)は正向反射消失増強作用の最小作用量よりも10倍高かった.他方,flunitrazepam,diazepam,triazolam,brotizolamの筋弛緩最小作用量は正向反射消失増強作用の最小作用量の各々0.3倍,1倍,1倍,3倍であった.〔3H〕flumazenilを用いた結合置換実験において,lormetazepamは小脳膜標品のω1型受容体に強く結合し(Ki=10nM),その結合親和性はflunitrazepamに比べ約3倍,diazepamに比べ約11倍高かった.lormetazepamは脊髄膜標品のω2型受容体へも結合し,その結合親和性(Ki=29nM)は小脳膜標品への親和性の約1/3であった.他方,flunitrazepamやdiazepamは小脳膜ω1型受容体および脊髄膜ω2型受容体いずれにもほぼ等しい親和性で結合した.lormetazepamのGABA比(GABA存在と非存在下での結合阻害値IC50の比;GABA受容体への影響度の指標)は小脳膜ω1型受容体では3.9であり,diazepam(3.3)やflunitrazepam(2.6)よりも高く,一方脊髄膜ω2型受容体では4.0であり,diazepam(4.4)やnunitrazepam(5.1)よりも低かった.〔3H〕Ro5-4864を用いた腎臓膜ω3型受容体結合置換実験においてlormetazepamの結合親和性(Ki=213nM)はdiazepam(Ki=362nM)やflunitrazepam(Ki=137nM)と同様に弱かった.以上の結果から,lormetazepamはBZ系睡眠導入薬の中でもとりわけその睡眠増強作用に比して筋弛緩作用が弱い薬物であること,並びにこの薬理学的な性質はlormetazepamがω2型やω3型受容体よりもω1型受容体に対して,より強い結合親和性とアゴニスト活性を有していることに起因すると推察された.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top