2021 年 47 巻 2 号 p. 51-56
二分子膜構造を持つ非球形な分子集合体バイセルは,集合構造を利用した機能性膜材料への応用が期待される.本研究では脂肪酸oleic acid(OA)と界面活性剤CHAPSOから成るバイセルの調製を試み,原料組成がOA/CHAPSO分子集合体のサイズおよび膜物性におよぼす影響を検討した.動的光散乱法による測定の結果,OA/CHAPSO分子集合体のサイズはOAとCHAPSOとの組成比XOA (=[OA]/([OA]+[CHAPSO]))が0.3–0.7の範囲において22.5–135 nmで調整できることがわかった.また,これらの分子集合体の膜物性をLaurdanを用いた蛍光プローブ法で評価した結果,0.3≤XOA ≤ 0.7では不均一な二分子膜構造の形成を確認できたので,バイセルの形成が示唆された.さらに,OA/CHAPSO分子集合体の分散安定性は対イオンとしてNa+を添加することで向上した.