日本化學雜誌
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四員環および五員環を含む多縮合環化合物の電子状態と反応性
米沢 貞次郎清水 瀞森本 晴夫加藤 博史
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1969 年 90 巻 9 号 p. 865-872

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抄録

ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕,トリシクロ[4.2.0.02,5]オクタン〔2〕,1,5-シクロオクタジエン〔3の〕,トリシクロ[3.3.0.02,6]オクタン〔4〕およびキュパン〔5〕の電子状態と反応性を拡張Hückel法で検討した。
ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕について,図1の角θを変化させて検討した結果,全電子エネルギーはθ=120°のときもっとも安定となり,この構造は,ピシクロ[1.1.0]ブタンの安定な構造における角θとほぼ一致している。しかしながら,化合物〔1〕のHOエネルギー,LVエネルギー,両軌道における電子分布およびAO bond populationを検討した結果,ピシクロ[2.2.0]ヘキサン〔1〕は,ピシクロ[1.1.0]ブタン環に存在したような不飽和な性質を期待することはできない,という結論に達した。
つぎに,全電子エネルギー,イオン化ポテンシャルおよび電子親和力の計算値から,化合物〔2〕は,シス体よりもトランス体が安定であり,化合物〔3〕は,シス,シス-イス形がもっとも安定とえられた。
化合物〔1〕~〔4〕およびその同族体の光分解反応および光塩素化反応について,その電子分布から実験事実を説明することができた。
最後にキュバン〔5〕について,四員環平面とC-H結合のなす角ηがC-C骨格の安定性に大きく依存することを確かめている。

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© The Chemical Society of Japan
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