九州神経精神医学
Online ISSN : 2187-5200
Print ISSN : 0023-6144
ISSN-L : 0023-6144
総説
統合失調症の神経生理学的な知見について
平河 則明平野 羊嗣鬼塚 俊明
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 64 巻 2 号 p. 55-62

詳細
抄録

 近年の神経生理学的検査の技術進歩に伴い,精神疾患においても新たな知見が次々と報告されている。本稿では主に,脳波や脳磁図を用いた統合失調症の神経生理学的な知見について概観した。例えば,統合失調症者では,感覚フィルタリング機能を反映しているとされる聴覚P50の抑制機構の障害や,前注意過程の指標とされる聴覚ミスマッチ陰性電位の振幅低下が報告されている。さらに,最新の研究では,統合失調症における高周波ガンマ帯域の神経同期活動の障害が多く報告されており,これは統合失調症の脳内における興奮性ニューロンと抑制性介在ニューロンの相互バランスの破綻を反映していると考えられている。精神現象を神経生理学的にとらえようとするこの試みは“神経現象学”という新たな分野にも通じる。最後に,これらの知見をもとに,今後の統合失調症研究の展望について考えてみたいと思う。

著者関連情報
© 2018 九州精神神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top