日本歯科保存学雑誌
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原著
試作S-PRGフィラー含有レジン系仮封材の辺縁封鎖性に関する研究
田村 ゆきえ高橋 史典角野 奈津川本 諒辻本 暁正山路 歩坪田 圭司黒川 弘康宮崎 真至
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2013 年 56 巻 3 号 p. 193-199

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抄録

目的:間接修復法であるインレー等の仮封材として,レジン系仮封材が臨床応用されている.仮封材には,十分な機械的強度,良好な辺縁封鎖性,除去の容易性,あるいは簡便な操作性などの諸性質が望まれており,さらに改良が進められている.そこで,S-PRGフィラー含有仮封材を試作し,色素漏洩試験を用いることによって辺縁封鎖性ならびに熱膨張係数について検討を行った.材料と方法:供試した仮封材は,光重合型レジン系仮封材を3種類,化学重合型レジン系仮封材を4種類,および試作S-PRGフィラー含有化学重合型レジン系仮封材である.色素漏洩試験には,ウシ下顎前歯を用い,歯冠部唇面に直径4mm,深さ2mmの倒円錐台形の規格窩洞を形成し,水洗乾燥し窩洞内に仮封材を製造者指示条件に従って填塞した.その後,各試片を24時間37℃精製水中に保管(24h群),あるいは24時間保管後,5℃と55℃で各温度における係留時間を1分間としたサーマルサイクルを100回負荷(TC群)した後,0.5%塩基性フクシン液に24時間浸漬した.仮封材を歯科用探針で除去し,色素浸透状態をスコア化し判定を行った.また熱機械分析装置を用いて,各製品の30〜80℃間の平均熱膨張係数(×10-6/℃)を求めた.成績:色素漏洩試験の結果,24h群では化学重合型仮封材は色素浸透がほとんど認められず,光重合型仮封材では,エナメル質に色素浸透がわずかに認められた.TC群では,化学重合型仮封材は一部の製品を除いて24h群とほぼ同様の辺縁封鎖性を示したものの,光重合型レジン系仮封材では,辺縁封鎖性が低下した.熱膨張係数は各製品によって異なる値を示し,124.8〜177.4×10-6/℃であった.結論:本実験の結果から,試作S-PRGフィラー含有化学重合型レジン系仮封材は,光重合型の製品と比較して良好な辺縁封鎖性を有するとともに,低い熱膨張係数であったところから,臨床使用においても市販製品と同等以上の効果を有するものと示唆された.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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