アンサンブル
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最近の研究から
化学反応による高分子の劣化と半結晶高分子の破壊プロセス
樋口 祐次久保 百司
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2014 年 16 巻 3 号 p. 181-187

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抄録

高分子の劣化反応と破壊現象に関してそれぞれ第一原理分子動力学法と粗視化分子動力学法を用いて研究を行った.化学反応による劣化においては高分子の変形により力が発生することを考慮し,ポリエチレンの伸長と押し込みによる切断・結合過程を調べた.切断過程が静的な計算と同じ反応経路を通るのに対し,結合過程は水素原子の反発により化学反応が阻害されることを明らかにした.この結果より我々は,切断と結合反応は静的な計算では同じ反応経路を通るのに対し,ダイナミクスを考慮すると異なる経路を通ることを見出した.高分子の破壊プロセスにおいては引っ張りによる半結晶高分子の破壊過程を調べた.その結果,亀裂の成長はアモルファス層によって阻害されることを明らかにした.半結晶高分子の破壊プロセスの応力発生において最も重要な要素は,エントロピーではなく,高分子の折り畳み構造からの緩和が難しいことによるボンドの伸び切りであることを見出した.最後に高分子鎖の切断が半結晶高分子の破壊プロセスに与える影響に関して考察したので紹介する.

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© 2014 分子シミュレーション研究会
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