農業土木学会論文集
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中央アジアの水稲を中心とした輪作体系下の灌慨ブロックにおける水・塩分の挙動
乾燥地における二次的塩害防止のための水管理研究 (II)
北村 義信矢野 友久安田 繁大庭 達哉
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2000 年 2000 巻 206 号 p. 183-192,a1

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抄録

アラル海流域のシルダリア川下流域において, 重大な問題となっている二次的塩害の発生メカニズムを解明するため, 広域塩分収支と圃場湛水に伴う土壌中の水・塩分挙動について現地実験を行った。得られた主な結果は, 次のとおりである。1) 塩分収支調査から塩分の残留がブロック内およびその周辺で認められ, 年々累積している。また, 作付パターンの前年に対する変化が, 塩分収支に大きく影響することが明らかになった。水稲区からの塩分の除去はほとんどが地表排水による。2) 下層に塩類集積層, あるいは高塩性地下水が存在する圃場での水稲作 (湛水栽培) は, より深い層の塩分を上方へ拡散させ, 浅い層の塩分濃度を高めるため, リーチング効果は期待できない。また, 湛水の塩分濃度の上昇を抑えるため, 掛流し状態での水補給が必要となり, そのことが大量取水・排水の主な原因となっている。3) 排水路への地下排水がほとんど機能していない。これは, 排水路の両岸が農道として利用きれ, 締固めが進んだことによる。水稲区からの浸透水は, 排水路の下を通って畑作区へ移動し, その地下水位を高めている。そのことが畑作区への塩分集積を加速させていると考えられる。したがって, 現整備水準のもとでは, 灌漑ブロック内での8圃式輪作体系の適用は望ましくない。

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© 社団法人 農業農村工学会
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