環境科学会誌
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一般論文
水道水中農薬のGC/MSスクリーニング分析法の開発と実試料への適用
小林 憲弘 土屋 裕子高木 総吉五十嵐 良明
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2020 年 33 巻 5 号 p. 136-157

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抄録

水道水あるいは水道原水中の農薬を既存の標準検査方法よりも迅速・簡便に検査するため,標準品を測定せずに,あらかじめデータベースに登録された情報を基に定性・定量を行う,「ターゲットスクリーニング分析法」の水道水質検査への適用について検討した。172農薬を対象として,GC/MSによるターゲットスクリーニング分析用のデータベースを2台の装置(GCMS-QP2010 Plus, JMS-Q1050GC)でそれぞれ構築し,装置による違いを比較した。さらに,これらのデータベースを用いて,水道水・水道原水等75試料を測定し,標準検査方法で測定した結果と比較することで,標準検査方法との定性・定量結果の違いについて考察した。2台の装置で分析した各農薬のマススペクトルはほぼ同一であり,大部分の農薬については検量線の傾きも2倍以内であったことから,保持時間を正しく予測できれば,別の装置で作成したスクリーニング分析用データベースを用いて,定性・定量することも可能と考えられた。しかし,一部の農薬については装置間での検量線の傾きが大きく異なったことから,より正確な定量値を必要とする場合は,同一機種で作成したスクリーニング分析用データベースを用いて定量を行う必要があると考えられた。スクリーニング分析法による実試料の分析の結果,全ての試料において2台の装置で同一の農薬が検出された。また,各試料から標準検査方法で検出された農薬は,スクリーニング分析法でも同様に検出された。スクリーニング分析法の定量値を標準検査方法と定量値を比較した結果,GCMS-QP2010 Plusでは標準検査方法の0.5~3.1倍,JMS-Q1050GCでは0.5~2.6倍の誤差範囲内にあった。検出される農薬を広く検索する目的で用いる場合,スクリーニング分析法は有用と考えられた。

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