大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
原著
2011年11月に関東で観測されたPM2.5高濃度の解析
長谷川 就一米持 真一山田 大介鈴木 義浩石井 克巳齊藤 伸治鴨志田 元喜熊谷 貴美代城 裕樹
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 49 巻 6 号 p. 242-251

詳細
抄録

2011年11月2~6日に関東地方で高濃度のPM2.5が観測された。PM2.5の全国的な状況を見たところ、高濃度になっていたのは関東地方が中心であったことから、本事例は長距離輸送や越境汚染によるものではなく、関東地方内の発生源の影響が大きかったと推測された。この期間は全般に弱風により大気が滞留し、3~4日は接地逆転層形成による安定、5~6日は中立となっていたことが高濃度を招いたと考えられる。関東各地で観測したPM2.5の成分は、NO3-とOCが顕著に高いのが特徴であった。NO3-は特に5~6日に高くなっていたが、これは夜間の高湿度の影響でNOからHNO3への生成過程が顕著に起こったことが要因であると考えられる。また、3~4日にもNO3-は比較的高濃度になったが、NOの時空間的挙動から、農作物残渣(バイオマス)の燃焼が影響していた可能性が考えられる。NO3-と同様にOCも高く、加えてK+やchar-EC、レボグルコサンなど、バイオマス燃焼の寄与を示す成分も高かったことから、全般的にこの時期に盛んになる農作物残渣燃焼の影響が大きかったと推測される。ただし、SO42-やVなどの挙動から、南部を中心に化石燃料燃焼の影響も一定程度あったと考えられる。また、PM2.5質量濃度は水分の影響を抑える方法により測定されているが、成分からの再構築濃度などによる検討から、この期間の高濃度時は水分の影響が比較的大きかったと推測された。

著者関連情報
© 2014 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top