2013 年 48 巻 2 号 p. 82-91
2009 年12 月26 日、京都市内でエアロゾル化学成分の粒径別高時間分解能観測を行い、黄砂と人為起源物質の越境輸送過程を検討した。観測機器としてβ線式浮遊粉じん計(SPM-613D、紀本)を用い、PM2.5 およびPM10-2.5 の二粒径に分けて1時間毎にPTFE テープろ紙に採取して、イオン成分と無機元素成分を定量分析した。気象データから、26 日15 時までに日本海を東進する低気圧から伸びた寒冷前線が通過したとみられた。26日15時までの4時間にSO2、PM2.5 中の(NH4)2SO4およびPb、PM10-2.5 中のNO3-を含む汚染気塊が飛来した。無機元素濃度比(Pb/Zn)を利用した解析および後方流跡線解析により、この汚染気塊は高SO2排出地域とされる中国東部を経由したことがわかった。続いて、人為起源物質を多く含む汚染気塊と入れ替わるように、26 日19 時までに黄砂を主体とする気塊が飛来した。この時、海塩粒子の変質がみられず、気塊の特性は大きく変化していた。エアロゾル化学成分の粒径別高時間分解能観測により、大陸から輸送された黄砂と人為起源物質の詳細な輸送過程が明らかとなった。