日本健康教育学会誌
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原著
子どものスポーツ活動とGrit(やり抜く力)の関連:横断研究
山北 満哉安藤 大輔佐藤 美理秋山 有佳鈴木 孝太山縣 然太朗
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2018 年 26 巻 4 号 p. 353-362

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抄録

目的:小学5年生を対象にスポーツ活動とGritの関連を検討することを目的とした.

方法:本研究は2015年12月に山梨県甲州市で実施した横断研究であり,対象者は市内の小学5年生全員(287名)とした.子ども用8項目のGrit尺度の合計点であるGrit得点,及び2つの下位尺度得点(根気得点と一貫性得点)を算出し,評価に用いた.スポーツ活動の実施の有無は,運動やスポーツに関する習い事の記載の有無により,活動あり群となし群に分類し,さらに記載されたスポーツ種目をチームで試合を行う種目(団体種目)とそれ以外(個人種目)に分類した.Grit得点,及び根気得点,一貫性得点を目的変数,スポーツ活動の実施の有無及び種目のタイプを説明変数として,家庭の社会経済状況を共変量とした共分散分析を行った.また,日本語版子ども用8項目のGrit尺度の因子構造,及び信頼性,妥当性の検討を行った.

結果:日本語版子ども用8項目のGrit尺度は成人用と同様に2因子構造(根気と一貫性)を示し,信頼性(Cronbach α:根気尺度=0.77,一貫性尺度=0.69),構成概念妥当性が確認された(RMSEA=0.076,CFI=0.957, TLI=0.925).男子の根気得点において,活動あり群[推定周辺平均 (標準誤差); 3.3 (0.07)は活動なし群 [3.0 (0.11)]と比較して有意に高い値を示した.また,種目の分類別に検討した男子の根気得点の比較では,団体種目群[3.4 (0.08)]が活動なし群 [3.0 (0.11)]に比して有意に高い値を示した.一方で,Grit得点と一貫性得点,及び女子の全ての得点において有意な差は示されなかった.

結論:スポーツ活動を実施している小学5年生男子の根気得点が高いことが示された.今後は,幼少期の社会背景を含めたより詳細な調査,及び縦断的な検討を行うことにより因果関係を特定することが必要である.

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