舌は咀嚼や食塊の形成,移送などに大きく関わるため,摂食嚥下機能の評価において舌機能を評価することは重要である。そこでわれわれは,舌圧測定器 (TPM-01,JMS 社,広島)を用いて,摂食嚥下障害者の舌圧測定を行い,摂食機能療法による最大舌圧の変化を評価した。対象は病院で歯科訪問診療を行った摂食嚥下障害患者8名 (平均年齢64.8±20.8 歳;男性4名,女性4名)とした。週に1度の摂食機能療法 (頸部,肩部関節可動域訓練,舌抵抗訓練を含む口腔周囲筋訓練,口腔清掃) を約5カ月間行った。初回から1カ月ごとに最大舌圧測定と藤島による摂食・嚥下能力グレード (以下,Gr) の評価を行った。その結果,対象者において Gr の変化はみられなかったものの,最大舌圧は有意に上昇した。また,最大舌圧は初めの2カ月で大きく上昇し,その後変化なく推移した。摂食機能療法を行うことで,介入初期に舌の筋力が向上し,継続によりそれを維持できる可能性が示唆された。