感染症学雑誌
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原著
HIV 関連神経認知障害が疑われたHIV 感染者の検討
森岡 悠岸田 修二今村 顕史関谷 紀貴柳澤 如樹菅沼 明彦味澤 篤
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2014 年 88 巻 2 号 p. 141-148

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抄録

背景:抗HIV 療法の進歩によってHIV 感染者の長期生存が可能になってきた現在,HIV 関連神経認知障害(HAND)が問題となりつつある.本邦においてHAND の報告は少なく,臨床像や有病率は明らかではない. 対象・方法:都立駒込病院において,平成18 年度のエイズ研究事業で作成された8 つの神経心理検査からなるHIV 感染者高次機能評価バッテリーが30 人のHIV 感染者に施行された.中枢神経合併症のため5 人が除外され,HAND の合併が疑われた25 人の患者背景,頭部MRI 所見,髄液所見,神経心理検査結果を重症度別に比較した.また,バッテリー内の一部の検査を組み合わせて,簡易バッテリーとして用いた場合の検討を行った. 結果:25 人中19 人(76%)がHAND と診断され,その内訳は7 人がHIV 認知症,8 人が軽度神経認知障害,4 人が無症候性神経認知障害であった.重症度別では,患者背景,頭部MRI 所見,髄液所見はいずれも一定の傾向が見られなかった.簡易バッテリーの検討では,International HIV Dementia Scale もしくは符号の検査のいずれかがカットオフ値以下であった場合,94.7%のHAND 症例は検出可能であった. 結論:臨床的にHAND の合併が疑われた大部分のHIV 感染者に対してHAND の診断がなされた.HIV 感染者高次機能評価バッテリー内の一部の神経心理検査は有用であったが,現行のHAND の診断基準に合致したものに改訂する必要がある.

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© 2014 社団法人 日本感染症学会
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